パンのはなし

安全性Q&A安全性Q&A

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いつも食べているパンの安全性についてご存知ですか?
最近いろいろ気にしているけど、ちょっと難しそう!?なんて思っていませんか。
そんな気になる疑問にお答えします。

Q4 パン酵母とは?

  1. Q1 パンに使われる食品添加物は? 
  2. Q2 パンの残留農薬は? 
  3. Q3 イーストフードとは? 
  4. Q4 パン酵母とは? 
  5. Q5 パンのトランス脂肪酸は? 

パン作りは「発酵」がポイントです。パン生地を発酵させるためには、酵母は欠かせないもので、酵母が糖類をアルコールと炭酸ガスに分解して生成された炭酸ガスがパン生地の中で無数の気泡となり、ふっくらとしたパンになります。自然界にはたくさんの種類の酵母がありますが、そこからパン作りに適した酵母を選別して育てたもの(培養したもの)が「パン酵母」です。パン業界では、この「パン酵母」を「酵母」を意味する英語名の「イースト(Yeast)」と呼ぶことが一般化しており、パン酵母を使用したパン製品の原材料表示には「イースト」と記載されることもあります。

パン酵母

酵母(イースト)とは?

酵母は、アルコール発酵を営む菌類で、お酒の醸造やパンの製造には欠かせないものです。酵母の英語名はイースト(Yeast)ですので、酵母=イーストということになります。自然界には数えきれないほどの多くの種類の酵母が存在しています。人類がはるか昔から食品やアルコール製造に利用してきた酵母はSaccharomyces cerevisiae種に属する酵母が多く、ビールやワインの醸造やパンを作るのに使われる酵母もその一種です。
Saccharomyces cerevisiae種の中でもパン作りに適した酵母を「パン酵母」と言い、パン作りの適性が高い酵母を自然界から選別(分離)して純粋培養したものです。この「パン酵母」をパン業界では「酵母」を意味する英語名である「イースト(Yeast)」と呼ぶことが一般化しており、パン酵母を使用したパン製品の原材料表示には通常「イースト」と記載されていました。
しかし、「イースト」という呼び方は、イーストと酵母は異なるもので、非天然、あるいは安全性が低いといったイメージを消費者の一部に与えてしまう傾向があることから、最近では、「イースト」ではなく「パン酵母」と表示するようになってきています。

パン酵母(イースト)の安全性

パン酵母(イースト)は糖蜜を栄養源にして純粋培養されますが、この時、酵母が必要とする窒素やリンが培地に補われます。このため、パン酵母(イースト)には窒素やリン等が混合されており、これを使用したパンは健康に良くないと思う消費者がいるようです。しかし、窒素は空気中にも含まれるものですし、リンも細胞にとって不可欠な構成要素です。培地に補われた窒素やリン等の栄養源は培養工程中に酵母に吸収されて酵母の細胞を形成する有機質に変化します。更に、酵母に吸収されなかった窒素やリン等は増殖が終わった段階で除去されます。

パン酵母の歴史

19世紀の後半まで、パン作りには、果物や穀物に付着している酵母や、ビール・ワインといった醸造物中の酵母が使われていました。このような酵母は、そのままでは菌数が少なくガスを発生する力が弱いため、パン生地の発酵には使えません。そこで、小麦粉等の穀物粉と水を加えて培養を繰り返し行い、酵母を増殖させてパン種にしてから、パン作りに利用していました。
しかし、自然界から選別した酵母を純粋培養する技術が開発され、製パン用酵母としてイーストが市販されるようになると、パン種の利用は激減しました。パン酵母(イースト)は、パン種のように培養を繰り返す必要がないので使いやすく、発酵力が安定しているので、高品質のパンをいつも同じように作ることができるためです。
これに対して、昔ながらのパン種を使う方法は、培養を繰り返すという手間がかかる上、原料や作る人、環境などの影響によって味や発酵具合が変わってしまうので、安定性が低く、パンのふくらみが小さくなりやすいという欠点があります。しかし、自然界に存在する酵母を培養した発酵物には酵母以外に、多種・多数の乳酸菌やその他の微生物が増殖しているため、これらの複雑な相互作用によってパン酵母を使用したパンとは異なる複雑なおいしさを持つパンができます。

天然酵母とは?

近年「天然酵母」と表示するパン類が見られます。野菜や果物、穀物などに付着している多種多様な酵母やカビ、細菌を増殖させたもの(昔ながらのパン種)を「天然酵母」と呼んでいるようです。しかし、酵母はもともと自然界から選別したものなので、天然や人工といった区別はなく、「天然酵母」の定義もありません。
社団法人日本パン工業会では何らかの対策を講じる必要があると判断して、社団法人日本パン技術研究所に対し、「天然酵母」の妥当性について科学的、合理的な見解を構築するよう依頼しました。同研究所は、市場の実態調査及び消費者の意識調査を行った上で、専門家による審議を行い、パンの天然酵母表示に関する提言を行っています。 この見解によれば、「天然酵母」という表示は不適切であり、あえて表示するのであれば、「天然酵母種」という表示が考えられるが、これも避けるのが望ましいとしています。なお、代替案として、「レーズン発酵種」や「酒種」といった表示を推奨しています。

参考ページ・資料
●「天然酵母表示問題に関する見解
(PDF 約820KB)日本パン技術研究所


最終更新日:2010年12月11日