パンのはなし

パンの歴史パンの歴史

パンの始まりとひろがり今から8000年〜6000年ほど前、古代メソポタミアでは、小麦粉を水でこね、焼いただけのものを食べていました。これがパンの原形とされています。

古代エジプトのパンづくり古代メソポタミアのパンは無発酵でしたが、その後、古代エジプトで、おそらくほんの偶然から「発酵パン」が誕生し、食物として、また、供え物としても、作られるようになりました。

古代ローマ時代のパンの生産古代エジプトから古代ギリシャへ、パン作りが伝えられると、製パン技術を身につけた専門のパン職人が登場して、ブドウ液から作られたパン種も使われるようになり、いよいよパンは量産されるようになったのです。パンはヨーロッパからアジア、アフリカへも伝えられ、世界各地で主食として取り入れられるようになりました。

日本には、戦国時代に、鉄砲とともに伝えられたとされています。その6年後イエズス会のフランシスコ・ザビエルらが、日本でもパン作りを始めましたが、キリスト教が禁じられてからは、長崎などで西洋人のために細々と作られていただけでした。

日本人のためにパンが作られたのは、1840年に中国で起こったアヘン戦争がきっかけでした。徳川幕府は、日本にも外国軍が攻めてくることを恐れ、兵糧としてパンを作らせたのです。米飯では炊くときの煙が敵方にとって格好の標的になりかねません。それに比べ、固いパンは、保存性と携帯性の面ですぐれていると考えたからでした。

幸い、この非常食は活用されずにすみましたが、このときパン作りの指揮をとった江川太郎左衛門は、「パンの祖」として知られるようになりました。

1854年に鎖国が解かれると、横浜、神戸など港町を中心に、パン作りが広がりました。1869年、現存するパン屋でもっとも古い「木村屋総本店」が銀座に開業。5年後には、日本独特の「あんパン」が発売され、人気商品になりました。

第二次世界大戦後は、食生活の洋風化が進み、パンは米に次ぐ主食としてすっかり定着しました。

 パンの歴史年表

パンの歴史 その頃日本は? その頃世界は?
紀元前1万5000年〜
9000年頃

 中央アジアから西アジアで小麦の栽培がはじまる。

麦の栽培

 縄文時代早期。

 ドングリやクルミなどを植林栽培する初歩的農業がはじまる。

 牛乳が人間の食糧として飲まれはじめる。

 長江流域で水稲稲作がはじまる。

紀元前6000年〜
4000年頃

 古代メソポタミアでは、薄いせんべい状の平焼きパンを作っていた。

メソポタミア時代

 縄文時代中期(最盛期)。

 黒海周辺で馬が家畜化される。

紀元前4000年〜
3000年頃

 エジプトで発酵させたパンが焼かれ始めたと考えられている。

古代エジプト

 縄文時代中期〜後期。

 集落が大型化。植林農法の主軸がドングリから栗へ。

 メソポタミアで青銅製の武器が作られはじめる。

紀元前
500〜400年頃

 ギリシアで発酵にワインが使われ始める。

古代ギリシア

 同じくギリシアでは、主食的役割のリーンなパンに加え、バターや牛乳、果実などを加えたリッチなパンも作られはじめる。

 弥生時代がはじまる。

 孔子、釈迦、ソクラテスの時代

 

紀元前
300年頃

 共和ローマで職人ギルドの結成とパンの量産化がはじまる。
(製パン技術の原型が確立してヨーロッパ全体に普及していく。)

古代ローマ

 弥生時代。
古墳時代の幕開け。

 秦王政が斉を滅ぼし中国を統一する。

紀元前
200年頃

 

 日本に稲が伝わる。

 ヘレニズム時代。

紀元前
100年頃

 

 中国を経て、日本に小麦が到来する。

 共和制ローマからローマ帝国へ。

中世
6世紀〜16世紀

 狭い地域で作られていたパンが他の地域のパンと統合され、国家的規模で代表されるパン・ナショナルブレッドへと発展していく。
(現在のフランスのパン、イギリスのパンなどの始まり。)

 12〜13世紀—パンの品質向上・技術改良は、教会主導から貴族や国王が力をそそぐようになる。

 14世紀—多くの国王がパンの研修所を設けていた。

中世フランスのパン屋

 古墳時代から室町・戦国時代。

 7世紀頃(飛鳥時代)、麺が伝わる。

 平安時代(8世紀末〜12世紀末頃)、小麦は米より高価だった。

 鎌倉時代(12世紀末〜14世紀中頃)、まんじゅうが伝わる。

 16世紀半ば(室町時代〜戦国時代)、ポルトガルから種子島に鉄砲とともにパンが到来する。

 麺・まんじゅうなどの製造を通して、パン作りの基礎技術が備わっていく。

 12世紀—十字軍

 13世紀—モンゴル帝国

 14〜16世紀—ルネッサンス

 16世紀—地動説

17世紀

 1674年—オランダで顕微鏡を使用して微生物が発見される。(発酵が微生物の働きによることを発表したのは、パスツールで1861年のこと。)

アントーニ・ファン・レーウェンフック

 安土桃山時代の終わり。江戸時代の始まり。

 長崎で大量にビスケットが作られフィリピンに輸出されていた。—パンはお菓子として発展していく。

 ヨーロッパから北アメリカ大陸への移民。

 科学革命(ニュートン、ガリレオ、ケプラーなど。)

18世紀

 イギリスで日本の食パンの原型となるホワイトブレッドが誕生する。

イギリスのパン

 元禄文化と江戸の改革

 ヨーロッパの躍進

 産業革命

 電気技術の始り

19世紀

 1854年—アメリカでパテント・フラワーと呼ばれるきめ細い高品質な小麦粉を作る製粉機が発明される。

 19世紀後半—バゲットやバタールなどフランスパンが現在のような形になる。

フランスのパン

 1842年(天保13年)—江川太郎左衛門が韮山の私邸で大規模なパンの試作を行う。(アヘン戦争後のイギリス襲来に備え、兵糧としての堅パンが見直される。)

江川太郎左衛門

 明治2年—江戸改め東京・芝の日影町でベーカリー木村屋総本店が開業。

 明治7年—木村屋総本店があんパンの開発に成功する。

あんパン

 1840年—中国で清とイギリスとの間でアヘン戦争が始まる。

20世紀

 19世紀後半〜20世紀前半—ドイツでは生活改善運動が起こりライ麦パンなどの茶色いパンの伝統が守られ今日に至る。

ドイツのパン

 20世紀前半—フランスでクロワッサンが誕生する。

クロワッサン

 20世紀中頃—アメリカでロールパンが誕生する。

アメリカのパン

 第一次世界大戦(1914年〜1918年)後、ドイツ式のパン焼きがま・アメリカ式のリッチなパン(菓子パンに近いパン)・純粋培養イーストの工業化などがもたらされ、日本のパンの近代化が始まる。

日本のパン

 2度の世界大戦

*参考文献— 生活の科学シリーズ32「パンの小百科」 発行:財団法人 科学技術教育協会/協力:パン食普及協議会
*参考文献— 生活の情報シリーズ21「パンの知識」 発行:株式会社 恒信社/協力:パン食普及協議会