おいしさの秘密
Q1 おいしさの秘密はタンパク質?
パンのおいしさの秘密は、原料の小麦粉に含まれるたんぱく質にあります。
小麦粉の中のたんぱく質は、その大部分がグルテニンとグリアジンです。小麦粉に水を加えてこねると、この2種類のたんぱく質は水を吸収して結びつきます。これによって、「グルテン」という物質が形成され、粘弾性のあるパン生地(ドウ)ができます。
グルテンには伸展性があり、生地の中で気泡(空気)を膜のように包み込みます。気泡は、パン生地の醗酵とともに大きくなりますが、グルテン構造が十分に強くないと、気泡を包む膜が破れてしまいます。グルテン構造がしっかりしていれば、薄い膜に包まれた細かい気泡がたくさんでき、ふっくらとしたきめ細かいパンになります。グルテンの質と量が、パンのおいしさを決めるといってよいでしょう。
強力なグルテンをたくさん作ることができるのは、たんぱく質の含有量が多い小麦粉です。そこで、パンには、たんぱく質を多く含んだ強力粉が使われます。ただし、例外もあります。例えば、独特の気泡をもつフランスパンの場合は、たんぱく質の量が少ない中力粉を使うなど、パンの特徴に応じた小麦粉が使われています。
パン用の強力粉の原料になる硬質小麦は、外国から輸入されています。国産小麦はうどん等の麺用に適した中力粉が主体で、パン用に適した高たんぱく質の小麦は生産量が少ないためです。
パン用の小麦の97%が米国産とカナダ産です。パン用の国産小麦は主に北海道や九州で生産されていますが、その量は3%に過ぎません。
昔は小麦粉のことを「うどん粉」、「メリケン粉」と称していましたが、国産小麦で作ったうどん用の小麦粉が「うどん粉」、お菓子に使う薄力粉やパンに使う強力粉がアメリカ産小麦で作った「メリケン粉」なのです。
その「うどん粉」も国産小麦の作柄によりますが、大半がオーストラリアから輸入されています。
種類 | タンパク質含有量(%) | 主な用途 |
---|---|---|
強力粉 | 11.2〜12.8 | パン、ぎょうざの皮 |
中力粉 | 9.0〜9.7 | うどん |
薄力粉 | 8.0〜8.8 | 菓子、てんぷら |
科学技術庁資源調査会編「五訂日本食品標準成分表」より